【ゴキブリさんへ】出てこなければ、君もしあわせ、私もしあわせ。

ある方にあてて一筆したためたいと思う。
夜キッチンに立っていると、一瞬「なにかの影か?目の錯覚か?」と感じ、
じっとしているとそこにカサカサ…と現れる君、ゴキブリさんだ。
「さん」付けをしたものの、大変申し訳ないが、本当は名前も書きたくない。
Gという隠語にするのも嫌だ。
(アルファベットのGが少し不憫だなとまで思っている)
名前を出さなければ伝わらないだろう、ということで記述したが、以後「君」と書くことにする。
まず、君のフォルム・色・速度・しぶとさ・繁殖力の強さ、申し訳ないがひとつとして好きなところがない。
アース製薬などの会社で君を研究しておられる方の中で、
「えーでもよく知ると意外に面白いんですよ」という方もいらっしゃるかも知れないが、
どんなに力説されても好きになれる自信がない。
そんな君に思う一番不可解なところ。
それは、君が外に出てこなければ駆除されることもなかったし、君が外にでてこなければ私もギャーギャー泣き叫ぶこともなかったということだ。
つまり「出てこなければ、君もしあわせ、私もしあわせ」なのだ。
君にも家族がいるのだろう、仲間がいるのだろう、食っていかねばならないのだろう。
気持ちは分かる。
だが頼む、私の世界線とは交わらずに、そちらの世界線でやっていてほしいのだ。
中学生の頃、座っていた私の脚を壁際だと思ったのか、
私のかかとあたりからもものあたりまで君が駆け抜けていったのを覚えているかい?
人生で3本の指に入るくらいの声量で絶叫したんだよ。見事にトラウマになったんだ。
ここまで言っても出てきてしまうのならば、容赦せず殺虫剤の力を借りるのだが、
そういう対応をすることさえ、君に関わっている!という事実がもう嫌なので、
「出てこなければ、君もしあわせ、私もしあわせ」これが君にとっても私にとっても一番いい選択だと思う。
嫌だ嫌だと綴られては、君にとっては決して気持ちのいいお手紙ではないだろう。
ただ、こちらも平穏な生活を送りたい一心なのだ。
受け入れてくれるなら、どうか私と同じくらい君が嫌いなお宅にも、同じ対応をしてほしい。
夫には「テラフォーマーズの世界になったらどうするの?」と言われたことがある。
名前だけ知っていて内容を知らなかったので調べたら、絶句してしまった。
(設定がすごく面白いなと思ったので、お話自体には興味がある)
…やはり、君とは別の世界線で生きていきたい。





